京都産婦人科医師 取材記

医療法人 柏木産科婦人科 院長 柏木智博

医療法人 柏木産科婦人科 院長 柏木智博

 

今回は京都産婦人科医会会長の柏木智博先生にインタビューをさせて頂きました。
インタビュアーの池上にとっては中学高校の先輩であり、お仕事でも26年以上前からお世話になっている先生で懐かしくもあり、和やかな雰囲気でお話を伺いました。

 

それではインタビューの内容をご覧ください。

 

●京都産婦人科医会の会長になられて4年目になりますが、変化した点や課題など教えていただけますか。

 

コロナ禍で会長になったので、未だに理事会もリモートで行なっています。理事の先生が26名いるのですが、全然会わない方もいますね。

 

会議のためにわざわざ来られる先生もいますが、多くは自宅やクリニックからダイレクトにつないでいるので、会議は楽になりました。地方の講演会もリモートで行なっているので、以前より今の方が参加しやすいですね。

 

会議や講演会に参加するための移動時間も無くなったので、空いた時間や夜遅くでも参加することが可能になりました。中には、リアルでの活発な意見交換や熱いやり取りを好む先生もいるかと思いますが、今はリアルで実施しているものは限られており、ほとんどがオンラインまたはハイブリッドでの開催です。

 

ハイブリッドといっても、関係者のみリアルで、他はオンラインという形ですね。そのため、会員の先生とはウェブ上でしか顔を合わせていません。ビデオをオフにされている場合もあるので、顔も映らないですしね。

 

もう、元には戻らないですよね。コロナが5類になり、マスク着用も緩和されますが、そういう状況下でも全ては戻らないと思います。

 

製薬会社もそうですよね。懇親会を開催すると費用もかかりますし、そもそも営業所もなくなってきているので、コスト削減の観点から見ても、この状況が維持されると思います。

 

●コロナ禍で、産婦人科の先生を取り巻く環境も変わったと思いますが、いかがでしょうか。

 

今は落ち着いていますが、初期の頃は受診抑制の問題がありました。産婦人科に限った話ではありませんが、患者さんが来ないのです。元々、コロナの前から少子化傾向もあって減少傾向にはありましたが、それがコロナで余計、拍車がかかりました。

 

お産が少ないですし、受診も少ないので、総合病院でさえもかなり影響が大きかったと思います。今は少しずつ回復してきていますが、この3年はかなりダメージを受けて閉院されたところもあるのではないでしょうか。

 

特に、お産をしている有床診療所は非常に厳しい状況です。京都も滋賀も全体的に患者さんが減ってきているので、小さく経営していたところは死活問題ですよね。

 

●急速に少子化が加速していますが、産婦人科医会として啓蒙活動などは考えていらっしゃるのでしょうか。

 

女性に対して、産みなさいということはなかなか言えないですよね。今は、子供を産みたくない、結婚もしたくないという人が多いと思います。そういう状況下で、産むメリットがないですよね。仕事のこともありますし、経済的に余裕があるかどうかも関わってくると思います。

 

昔は、赤ちゃんを産んだら近所の人が手伝ったりしてくれていましたが、今はそうではありません。核家族ですし、育てていくのも大変です。

 

産むメリットは、とても大事だと思っています。分娩育児手当金が4月から50万円になりますが、これを上げたところで本人にとってはメリットがないですよね。

 

妊娠が成立した初期にお祝い金で5万円、出産時も5万円出ることが決まっていますが、それだけでは足りないですし、もっと大きなメリットが必要だと考えています。

 

例えば、子供が大学生になるまで教育費は無料、税金の優遇があるなどです。今は、男女平等で共稼ぎの家庭がほとんどです。それで家族が成り立っているので、政治が動いてくれないと厳しいですね。

 

特に、京都は観光都市です。外から来て外に帰る人が多いので、ここで産む人が少ない状況にあり、滋賀や関東とは事情が異なっているかもしれません。

 

また、日本は欧米と違って保険医療制度ですが、最近は集団検診の受診率が減ってきています。どうして減っているのかと考えると、女性に限らず男性もそうですが、面倒臭い、時間がない、乳がんになりっこないと思っている人がほとんどです。

 

乳がんは、9人に1人がかかる、とても罹患率の高い病気です。特に、40代や60代にピークがあるのが特徴なのですが、それが理解されていないところがあります。

 

欧米の場合、風邪をひいても病院にかかるのは非常に敷居が高いものです。しかし、日本であれば、自由に受診することができます。京都なら、土日祝日は救急で受診ができますし、気軽に行くことができます。そのような中で、いかに受診者を増やすかという問題は難しいですよね。

 

●患者側のヘルスリテラシーがダウンしているのでしょうか。

 

それはありますね。有名人が乳がんで亡くなった時は一過性で上がりますが、持続しません。乳がん検診の受診率を上げるためにはどうしたら良いかと考えたときに、行政の協力は欠かせないと考えています。

 

対象者に対して個別に周知をする、また、産婦人科だけではなく、内科や整形外科、すべての診療科の協力を受けて啓蒙していかなければいけません。でも、そういうことをしているところはないですよね。産婦人科医が、かかりつけ医に意識を持っているかどうかも疑問だと感じています。

 

コロナ禍になり、産婦人科でもワクチンを打つようになりました。男性に対しても、地域医療の一環として行なっています。男性の中には、産婦人科に初めて入ったという方もいますが、地域医療の中で産婦人科医がかかりつけ医になってもいいと考えています。

 

●産婦人科医がかかりつけ医として、患者さんを診るということですね。

 

例えば、風邪をひいた場合は内科へ行く人がほとんどだと思います。しかし、これからの産婦人科は内科的な要素も診ていかないといけないですし、女性特有の疾患、うつ病や骨粗鬆症などは産婦人科中心で診ていくべきだと思っています。

 

女性は、女性ホルモンであるエストロゲンのおかげで、狭心症や心筋梗塞から守られています。しかし、更年期に入って閉経をし、50歳前後でエストロゲンが分泌されなくなると、男性並みに罹患率が増えることは意外と知られていません。その辺りはすごく大事で、フォローは産婦人科医がやるべきだと思っています。

 

●現在は、働き方改革の影響もあって作業の効率化やICT化が急務ですが、先生方の年齢も上がってきていて対応が難しい部分もあるかと思いますが、いかがでしょうか。

 

レセプトをオンラインで提出するなどは取り組んでいくべきだと思いますが、オンライン診療で患者と対面し、投薬や処方までしているところは少ないですね。

 

ピルに関しては、オンラインを使って処方するところが増えてきました。当院も対応しなければと思いながら、手をつけられていないのが実情です。お産をしている関係で、院内に誰かしら必ずいるので、緊急避妊ピルでも日曜や祝日、夜に関係なく渡しています。

 

将来的には、産婦人科であっても乳がんのスクリーニングすることは必要だと思っています。ただ、産婦人科医からすると、超音波の勉強をしなくてはいけないことや、見落としが怖いという気持ちはあると思います。ですが、産婦人科医は毎日、お腹を触っているので、超音波でのスクリーニングは得意なはずです。

 

超音波に関しては、今後、AIを用いて診断できるようになると思うので、そうやってスクリーニングをして、異常があれば乳腺外科医のいる病院に紹介をする。マンモグラフィーの導入は大変ですが、AIが入ってくることで良い形で進むことを期待しています。

 

AIの話をしましたが、私は、いくらAI化をしても触ってわかることもあると考えています。また、スキンシップや信頼関係は、かかりつけ医としては必要ですし、むしろ、そちらの方が大事だと思います。かかりつけ医は、すなわち、頼りになる医師のことです。

 

産婦人科以外のことも相談に乗ってくれる、頼りになる医師にならなければならないと思っています。スーパードクターにならなくても良いので、きちんとしたかかりつけ医になるべきですよね。

 

●全国的に医療機関の人材確保が難しくなっていると思いますが、いかがでしょうか。

 

それは感じますね。助産師募集と書いても、なかなか集まらないのが実情です。助産師だけではなく、看護師や調理師、掃除や受付も人材は確保しにくい状況が全国的にあると思います。周りとの調和が必要なので、時給は上げにくいですよね。

 

どの職種でもそうですが、質の低下については非常に危惧しているところです。患者サービスや開業医は、受付で対応が悪かったら、その後、患者さんは来てくれません。先日も、遠くから来た患者さんがいたので、当院に来た理由を聞いてみたところ、「受付の対応が悪かったから」と話してくれました。受付は医療機関で最初に出会う人間です。性格の問題もありますが、教育はいつの時代に大事だと感じています。そのため、AI化が進むことによって、質が低下しないか心配しています。

 

●これから取り組んでいきたいことなどありますか?

 

私の任期を通じて、HPVワクチンの接種率が上がっていません。キャッチアップ接種が令和4年8月から始まっていますが、残された期限があと僅かです。8年間、受診の積極的勧奨を受けていなかった人もいますし、若い人も接種していないですよね。

 

これは問題で、行政もあの手この手でやっていますが、なかなか増えていません。やはり、接種者を増やすには、産婦人科医だけではなく、全診療科において、HPVワクチンの積極的勧奨に取り組んで欲しいと思っています。

 

そうでなければ、若くして子宮頸がんで命を落とす人が増えてしまいます。マスコミは、HPVワクチンは怖いという意識を植え付けていますし、特に、親が怖がっていると感じています。

 

これまでは、産婦人科医がワクチンを打つ場面はインフルエンザや風疹くらいしかありませんでしたが、今は、コロナのワクチンを打つことも増え、産婦人科医も筋注に慣れてきました。世代による差もありますが、HPVワクチンは受けた方が良いことを前面に出して接種率を上げていきたいですね。

 

●まとめ

 

コロナ禍での会長就任で様々な変化に対応していかなければいけない中での産婦人科医会運営は難しい面もあったかと思います。しかし、それを淡々と実行されてきたのだなとお話を伺いながら感じました。

 

現在の日本の大きな課題として少子化対策があり、その主たる関係者として産婦人科の果たす役割は大きいと言えます。産婦人科が元気じゃないと日本も元気になりません。
そんなことを感じた取材でもありました。

 

柏木先生、お忙しい中、インタビュー取材を受けて頂き、ありがとうございました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 

(取材 池上文尋)

 

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京都大学 産科婦人科 万代昌紀教授

京都大学 産科婦人科 万代昌紀教授

 

今回は京都大学産科婦人科学教授 万代昌紀先生にインタビューをさせて頂きました。先生は2013年に京都大学講師から近畿大学の教授として赴任され、2017年3月から京都大学へ教授として戻ってこられました。

 

産婦人科医会インタビューとしては小西先生に続く、2回目の京都大学教授への取材となりました。それではインタビューの内容をどうぞ!!

 

●まず、最初にドクターになられたきっかけについて教えてください。

 

これといって、大きなきっかけはなかったのかもしれません。

私は理系に進んでいましたが、自分の特性としては文系だと感じていました。そのため、理系の王道というよりも、文系的なものを抱えて、なおかつ比較的潰しが効きそうな医学部を選びました。

 

実は、文学部など他の学部への進学も考えていましたので、そちらの試験勉強もしていく中で、偶然が重なったということもあるかもしれません。

 

両親や親戚にドクターがいる場合は、その世界も良くわかっているかと思いますが、私の場合は親族にもいなかったですので。

 

●産婦人科を選ばれた理由をお聞かせください。

 

私たちの頃は、現在のようにローテートがなかったので、実際の各科の雰囲気が見えず、よくわからないまま選んだようなところもあります。それでも、当時、本気で思っていたのが、胎児診療をしてみたいということです。

 

ヒトの人生の中で最初に医療を行うことができる診療科が、産婦人科ではないでしょうか。そのため、成熟した大人を診るよりも、面白いのではないかという考えはありました。

 

●産婦人科医になられて、良かったことはなんでしょうか。

 

他の診療科と比べようがないので、相対的に話ができるわけではないのですが、この20年ほどは産婦人科医として、後悔などを感じることはなかったですね。

 

ひょっとすると、他の診療科を経験してみると、あちらの方がよかったと感じるのかもしれませんが、産婦人科で取り組んでいることは非常に面白いですし、領域的にも魅力的だと思っています。

 

●先生は以前、近畿大学の主任教授でいらっしゃいましたが、私立大学と国立大学に何か違いなどは感じられていますか?

 

大学の規模ももちろん違うのですが、私大や国立の違いというよりも、大学の立ち位置や医局自体のカラーの違いを感じることが多いですね。

 

国立だからというわけではないと思いますが、京都大学はある種の独自性がありますし、近畿大学にも京都大学とは違った特殊性や立ち位置がありますね。

 

どちらも、楽しいところと難しい側面があります。近畿大学は、臨床を中心に取り組んでいましたので、そういった意味では私自身もたっぷり、臨床を第一線でできるという楽しさがありましたね。

 

京都大学は伝統的に基礎研究を大変、精力的に取り組んでいるところですので、その良さや楽しさも感じています。

 

●近畿大学からこちらへ移られるにあたり、いろいろな思いが交錯されたのではないでしょうか。

 

そうですね。こちらへ移ることについては悩みましたが、私自身は、チャレンジや次への発展のために環境を変えることは、自分にとっても周りにとっても決して悪いことではないと思っています。

 

●京都大学は、産婦人科全般に力を入れていらっしゃると思いますが、その中でも特に、先生ご自身が勢力的に取り組まれていることがあれば教えてください。

 

臨床では現在、私も含めてここ3代ほど婦人科腫瘍、つまり“がん”に取り組んできました。がんの治療全般に関しては、全国でもトップレベルではないでしょうか。

 

特に、ロボット支援手術(ダビンチ)に関しては、全国に先駆けて始めた施設ですので、それも含めて最先端の手術に関しては、どこにも負けないと思っています。

 

また、基礎研究をもとに、臨床に応用するという流れをしっかりと行っている施設は全国でもそれほど多くないと感じていますので、そこも力を入れているところですね。

 

●こちらでは、不妊治療にも積極的に取り組まれており、ネットワークも作られていますね。

 

全国的にみても比較的早い段階で作ったのではないでしょうか。自治体も巻き込んである程度大きな形にした、全国でも有数なものの一つだと思っています。

 

京都大学の生殖に関する歴史は古く、7代目の森教授が国内でも早くに体外受精を実施しています。その頃は、全国有数の生殖医療のメッカでしたので、こういった伝統を今後、また復活させていきたいですね。

 

●大学や関連病院において、現在、先生ご自身が感じられている課題があれば教えていただけますでしょうか。

 

やはり、働き方の問題が一番大きいのではないでしょうか。

人が足りないとハードワークになりがちになってしまい、そこをどうしていくのか難しいところではありますが、絶対に解決しなければならないことの一つではあると感じています。

 

京都大学では、昔から割と、女性医師がキャリアアップするためにどうしたら良いのかといったことを議論してきましたので、働きやすい環境作りには積極的です。

 

ただ、関連病院を含めてまだシステムとして機能しているとは言い難いところがあり、それが今後の課題でもありますね。

 

●先生ご自身の中で、今後、大学で取り組んでいきたいことやビジョンなどあれば教えていただけますでしょうか。

 

今後、どうなっていくのか非常に混沌としている医療体制の中で医局がどういう役割を果たしていくべきなのか、ということでしょうか。

 

日本のいまの医療体制というのは中規模病院が乱立し、それぞれの役割分担がうまく出来ていないと感じています。

 

一方で、私は決して、韓国のように大病院に完全集中してしまうことが、患者さんにとって本当に良いことなのかどうかわからないと感じています。

 

ロボット手術やゲノム医療もそうなのですが、ある程度、トップダウン的に大きな施設が一気に取り組むべきところを、横並び意識のために全体として医療レベルが遅れていく、というのが日本の医療の欠点だと思っています。その中で、大学病院がどういう役割を担うことができるのかということを考える必要があります。

 

大学病院をみて、他の施設が動くという形がいいのか、それとも、大学病院にある程度、集中させた上で他の病院は違うことをするというように役割分担をしたほうがいいのか、それはまだわかりませんが。

 

ただ、何かの形で進めていかなければ、世界の最先端の流れに日本の医療自体が追いついていかないだろうというのはありますね。

 

●実際、ロボット手術はどのくらい進歩しているのでしょうか。

 

がんの種類にもよりますが、子宮頸がんと子宮体がんに関していえば、海外、少なくともアメリカではすでに、9割がロボット手術となっています。

 

日本は全く異なり、全国的にみるとロボット手術は1割にも満たないのではないでしょうか。そういった状況を、日本の皆さん自身も遅れていると思っていませんし、医療者自体も何となく、その辺の危機意識がないところがあります。

 

日本には今、300台弱のダビンチがあり、世界で2番目の保有国ですが、決して実施数は多くありません。このような状況が、あらゆる分野においてみられ、日本の医療は決して、もう最先端ではない状況となっています。

 

例えば、アジアでも中国やシンガポールと比べると、おそらく、トップレベルの医療はもう日本を追い越していると思います。ただ底辺は、はるかに差があるので、そこだけみると、日本はまだ世界のトップの医療だと言えるでしょう。ですが、いずれその状況が底辺にも及んでくると考えられます。

 

先ほどのロボット手術一つにしても、結局、トップが走れないような状況になっているので、浸透しないまま全体としても遅れていくのではないでしょうか。

 

●京都産婦人科医会へのメッセージがあれば教えてください。

 

医療システムが地域の中にきちんと組み込まれていなければ、医療が成り立たない時代です。そのため、地域との間で役割分担をどんどん進めていくべきだと思います。

 

例えば、手術が終わった患者さんは極力早く、紹介していただいた先生のところへ帰ってもらい、一人の患者さんを大学と地域の施設、共同で診るというスタンスを患者さん自身にもわかってもらおうと取り組んでいます。

 

高度な医療をするために大学に紹介してもらうということではなく、両者がお互いに責任を持って役割分担していけるような地域医療を展開できればと思っております。

 

●これから、産婦人科医を目指そうとする高校生や大学生に向けてアドバイスがあればお願いします。

 

産婦人科というのは医学的にも、そして科学的にもとても魅力的な分野だと思います。

 

やはり、次世代を作る医療というのは産婦人科しか持っていませんので、そういった意味では、強烈に魅力的ですし、そこに魅力を感じて入ってもらえれば一生、興味が尽きることはないでしょう。

 

大学側としても、できるだけ産婦人科の魅力をアピールできるよう、情報発信をしていきたいと考えています。

 

●最後に、何か伝えたいことがあればお願いいたします。

 

大学病院そのものに対する捉えられ方が、人によっても違うと思うのですが、我々が思っている以上に周りから保守的な目で見られていることが多いと感じています。

 

新しい医療はもちろんのこと、働き方なども含めて最先端のことをやっていく組織が大学だと思っていますので、是非とも、そういう目で見ていただきたいと思っています。

 

●まとめ

 

今回は京都大学産婦人科教授の万代昌紀先生にお話を伺いました。

先生にインタビューをさせて頂いていて、感じたのは明るさとにじみ出てくる優しさとそして新しさです。

 

教授というと、医学部の最高権力としての大学病院教授というイメージがどうしても付きまといがちですが、そうではなく、この組織をどのように活性化して良い研究と医療を展開できるのか、そして地域の医療の中で医療資源をどのように最適化していくべきなのかを常に考え、それをみんなで実現していくというまさにリーダー的な存在だということが良く分かりました。

 

万代先生のコメントの中で「もう昔の大学教授のようなことはないんですよ」と笑いながら言われていたのが爽やかで印象的でした。

 

この場をお借りして、大変ご多忙の中、お時間を頂戴したことを厚く御礼申し上げます。

 

(取材 池上文尋)

 

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京都第二赤十字病院 産婦人科 衛藤美穂先生

京都第二赤十字病院 産婦人科 衛藤美穂先生

 

●はじめに、医師になられたきっかけを教えてください。

 

きっかけはNHKのテレビですね。 ちょうど高校2年生のときに、NHKで肝臓など人体の仕組みについてCGを使って紹介する「驚異の小宇宙・人体」という番組がありました。それを見て、人体の仕組みというものが面白そうだなと思ったことがきっかけです。それまでは、理系と文系で迷ってはいたのですが、医学部はあまり選択肢にありませんでした。

 

高校1年生で理系文系を決める学校が多い中、私の高校では3年生で分かれることになっていました。文系のほうが、成績が良くそちらに進もうと思っていたのですが、当時の担任が数学の先生で、みんなやればそれなりに出来るようにはなるのだから理系で国語ができることは得だよと話され、理系にいけばあとでどちらでも選択することができると感じたのでまずは理系に決めました。 理系分野では遺伝子組み換えの食べ物など品種改良にも興味がありましたので、医学部ではなく、理学部や獣医学部を考えていました。
ですが、仲が良かった女友達が急に医学部を目指すと言い出して。ちょうどその時に先ほどのNHKの番組を見て、そこからなんとなく医学部を考えるようになりました。

 

医者の仕事は自分のかかりつけの内科の開業医の先生のイメージだったのでピンときていないところもあったのですが、研究分野もあることを知り、仕組みについて勉強してみたいと思ったこともきっかけになりましたね。

 

●産婦人科を選んだ理由をお聞かせください。

 

理系文系のときと同じで、どの科にするのかなかなか選びにくかったというのが本音です。
私のときには臨床研修で各診療科をまわるということはなかったので、いきなり診療科に入ってやらなければいけない状況でした。
医学部に入って研修をしていると、手術もかっこいいというイメージがあってしてみたいと思いましたし、ホルモンなど内分泌的なことも面白い、どちらもやってみたいと思っていました。
結局、あれもこれもやってみたいということが多くて欲張りで決められず、婦人科であれば外科系内科系も出来ると思いました。

 

その頃、産婦人科は学生からは3K(キツイ、キタナイ、キケン)の科という評判があり、仕事が大変で、訴訟があって敬遠されるようなイメージでした。実は、同級生同士で結婚した友人がいるのですが、彼女は産婦人科を望んでいたにも関わらず、彼のほうがそれを許さなかったために結局、産婦人科ではなく他科を選んだということがありました。
私は他人にあなたはだめ・無理と言われることが嫌で、ダメだったら転科してもいいのだからまずはやってみようという感じで入ってみたので、産婦人科にいってみたら案外可能で続いているという感じです。

 

●産婦人科に入ってみて、良かったことを教えてください。

 

良かったことは、疾患のバラエティー豊かで回転が早いので飽きにくいということですね。①産科、②婦人科の良性疾患でも開腹・腹腔鏡手術、③悪性腫瘍、④子宮脱など機能再建の治療や手術、⑤内分泌・・・範囲も広くて。どこかに自分の興味がもてる分野がきっとみつかるので。
また、産婦人科は初診自分で診て、治療方針を立て、治療をしてその後のフォローも含めて全部診ていくということができます。
例えば、一人の患者さんに対しても良性の腫瘍の手術後に妊娠、出産まで取り扱うことができたり、そういう意味でも女性の一生をみていける科でもありますね。
産婦人科は、患者さんのバックグラウンドによってオーダーメイド的なところを求められることが多いように思います。年齢・仕事のキャリアや挙児希望、家庭内の人間関係など、のことを考慮して手術の時期や治療方法を選択していく必要があります。そこに留意しないと治療自体に満足できないこともありえますので、そういった部分でも自分のカラーが出せますし、その人に合わせてオーダーメイドで考えるということ自体も楽しいと感じています。

 

お産も、基本的にはさっと産まれて帰っていく方のほうが大多数ですね。なんといっても、とても幸せそうな瞬間に立ち会えるのはやはり素敵ですね。時々恐ろしい目にも遭いますが…すごく重症感があっても案外、峠を乗り越えると若さでめきめき回復していくというところがあったりして、やはり元気に退院していくという患者さんが多い診療科なのかなと思います。

 

●腹腔鏡は相応の経験や手技が必要かと思いますが、好き嫌いも関係するのでしょうか?

 

最初のうちは好みはあると思いますが、基本的に手術は全部同じだと思います。開腹の手術と腹腔鏡の手術が違うということはないですね。

 

腹腔鏡の良いところは、やはり傷が小さいので早く帰れるということです。内部では開腹と同じように臓器を切除したりしているので創部は同じ大きさのはずなのに離床や回復はやはり早いです。中には、大きな傷になっても仕方がないという方ももちろんいらっしゃいますが、男女ともにやはり傷は小さいに越したことはないと思っています。

 

腹腔鏡手術に関しては、わたしの場合は手術終了時の状態から巻き戻して考えていきます。難しさというのは、逆算して考えていかなければいけないところです。鉗子の入る場所が決まる=可動域が決まる=できることが決まる、ので、孔をどこにどの大きさで開けるかで勝負の大半は決まってしまいます。
開腹の手術であれば、見えにくかったり操作しにくければ、立ち位置を変え、違う角度からみて行うというようなこともできますが、腹腔鏡の場合は視点が決まってくるので、どうしても死角ができやすかったり、技術的に難しい局面ができてしまいます。
そのため、多少のできうる工夫や難しい局面への理解、出来上がりを想像して切る場所を決めていきます。手術の完成図から逆算しながらこの状態にするにはここに切開を入れるべきなど、考えて行わないと、手術に支障をきたしたり、リカバリーができないということがありえます。美しい手術は無駄がなくて出血させないようにうまく処理していきます。それを目指して、常に操作する最適の点はどこか考えながらやっています。これは開腹術でも同じとは思います。
そこが面白いと言えば面白いですし、気を使うといえば気を使うところではあるかなと思います。

 

●ドクターになられた時から比べて、仕事の変化はありましたか?

 

この歳になってくると、したいことばかりできるわけではなく、マネジメントなど他にしなければならないことが出てきます。
例えば、今であれば私は手術の配当などをさせてもらっているのですが、「この手術であれば、この人とこの人の組み合わせならできるだろうか」「これだとちょっと補助がいるかもしれない」など、限られた人数の配分の仕方や負担の分散について工夫しなくてはいけません。

 

仕事についても、昔は自分が担当している患者さんの受け持ちだけをやっていれば良かったのですが今は違います。
常々思っていることは、私だけができる手術などがあれば私自身の「売り」にはなりますが、体調を崩したり、子供に何かあって病院へ行けないという事態が起きた場合、患者さんも含めて私自体も一番困ることですよね。
それもあって、みんなが私と同レベルか出来ればそれ以上になり、逆に、私に教えてくれるくらいになってもらうことが理想です。そのためには、仕事の回し方や、モチベーションの維持についても考えています。

 

そうすることで、相手はやりたいことが出来るのでモチベーションが上がりますし、私は一緒に患者さんを受け持ってもらい、何かトラブルがあったときにその人に任せることができるというリスク分散になりますよね。
何かがあったときに、あの人が診てくれているのだから大丈夫と思える人材になってもらえるようにと思っています。

 

●病院勤務はお忙しいと思うのですが、気分転換などはどのようにされていますか?

 

気分転換については、家に子供がいるので帰ったら勝手に気分転換にならざるを得ないという感じですね。まだ子供小さいほうは1歳半なので、家で全く仕事はできず、中途半端に少し持って帰るということもやらなくなりました。
おかげさまで、「たまにくるおばさん」にはなっていませんよ。
その代わり、できる範囲内ではしっかりとやらせてもらっていますし、周りもフォローさせてもらえるというのではなく、自分たちがメインでやらせてもらっていると思ってもらえるように、微妙にまかせてしまうというスタンスでいます。

 

●今まで産婦人科医療に携わってきて、女性の職場環境についてどう感じていらっしゃいますか?

 

産婦人科は、もともと女性医師が多い科ですし、昔と比べてもロールモデルも他科よりは見つけやすく、はるかにやりやすくなっているのではないでしょうか。

 

ただ、私たちの世代やその少し下というのは一番微妙な時期だと感じています。
というのも、女性医師は「医者になった」という時点で仕事をやりたくて働いている方が多いはずですよね。でも、その母が専業主婦であった家庭で育っていれば、自分の母親の理想像・自分との比較対象は「専業主婦」なんですよね。でも、医者の仕事を続けながら自分の理想像であるお母さんのように家庭で振る舞うことはできません。時間は24時間しかないので、限界があります。
わが子を自分が子供の時のようにみてあげられないことや、夫の晩御飯を作れないことを申し訳ないと思うことがあるなど、自分で自分を縛っているのではないでしょうか。
夫も母が専業主婦だったら、それが普通として妻に求めてしまうところもあると思いますし。そして女性医師の妻は頑張って、頑張って、疲弊して燃え尽きてしまって。最初からあきらかに無理な設定なんです。家事や育児は生活するうえで男だろうと女だろうと必須のことなので、どちらか一方に大半を任せるという分担は共働きでいくならおかしいですよね。まず医師同士で結婚するなら、自分たちの育ってきた家庭のような家庭は通常は無理だと理解してほしいです。夫婦でよく話し合って、外に家事をアウトソーシングするなりして、お互いがやりたいことをやりたい配分で続けられる人生を目指してほしいです。

 

私の場合、夫は医師ではないので、決まった時間で帰宅しますし、彼は子育ても積極的にやってくれているので不自由を感じたことはあまりありません。私が働きたいなら協力する、と言ってくれ、感謝しています。彼が育ってきた家庭は母が常勤で働いてきたということも大きく関係していると思っています。
家庭の理解はありますが、自分の遊び、病院で雑務をするのはできるだけ土曜日に。日曜日は「子供との時間」という予定を一日いれて。予定を詰めてしまう癖が抜けないので。

 

●今後のキャリアについてどのようにお考えでしょうか?

 

それについては、あまり深く考えていないというのが本音です。
たまたま、手術が上手な先生方のところに派遣され、手術が面白いと感じるようになりましたので、このままであれば手術が出来るような大きな病院ということになりますよね。でも、ホルモンや不妊にも興味がなくなったわけではありません。
私は婦人科腹腔鏡手術の技術認定医を取りましたが、「腹腔鏡手術」は手術の一術式であって、一分野ではないですので。
現在、保険適用の拡大で、悪性腫瘍も腹腔鏡手術でやるという大きな流れになってきたのですが、それのみを今からメインでやっていくということは資格的にも興味的にも難しいと思っています。
自分で婦人科腫瘍の専門医を取るくらいまで、とはいかないのですが、婦人科の腫瘍の専門医をもった先生方、もしくは取ろうとして頑張っている先生と一緒にやっていけば、高いレベルのものできるのではと感じているので、自分が知らないことやメインでやっていないことであっても、色々なところとコラボレーションすることで自分の幅も広がっていくと思っています。

 

私の場合、今までお話したように、なかなかこれとしぼりきれずにいろいろな領域をやっていくといろいろ興味が出てくるからそれをそれぞれ伸ばした、という感じです。内科も外科系も興味があって、婦人科に入ってみたら案外お産も楽しい、手術も面白いといったように。
以前からウロジネコロジーという泌尿器科と婦人科の境界の分野に興味があるのですが、それに腹腔鏡もコラボレーションして、子宮脱など機能温存や機能形成を行う手術方法にも今はとても興味があります。決められなくて困るのですが、まだ決めなくてもいいかなと思っています。

 

●これから医学部に入ろうという学生さんや、医学部に入ってこれからどの診療科にいこうかと悩んでいらっしゃる学生さんに向けて、産婦人科の魅力などアドバイスをお願いします。

 

どの診療科でもそうだと思うのですが、少し掘り下げて自分の生活との関連がみつかると楽しくなりますよね。自分に合っている、合っていないはあるかもしれません、それは別として、産婦人科は領域が広くてきっと興味のある分野ができるとおもいます!
医者のいいところはどこかと言われたら、どこにいったとしても医者という「資格のある専門」として働けるということと、そんなに食いっぱぐれないということ、自分で専門を選ぶことができる!ということかなと思います。
これが会社であれば、営業へ希望を出しても通らない、違う部署に移されるという場合もあります。自分で実際まわってみて、興味がある、行きたい科を決めることができるのは医者だけです。そういう意味では、すごくいい職業なのではないかなと思います。

 

大事なことは、どこの診療科、どんな仕事であってもコミュニケーション能力は思った以上に必ず必要です。トークを磨いて、他人の心をおもんばかる能力を身につけてください!たとえ、基礎に進んだからといってコミュニケーション能力がいらないということはありませんし、臨床であればそれこそ毎日、患者さんと話さなければいけないですからね。

 

●最後になりますが、第二日赤さんと連携している開業医の先生方に向けてメッセージをお願いします。

 

他の病院へ紹介することもできる中、信頼していただき、大事な患者さんを紹介していただき感謝しています!その信頼と期待に応えたいという思いを持っています。
紹介状の返事がはからずも遅れてしまうなどの事態が発生して、ご迷惑をおかけしていることがあります。申し訳ございません。こちらでの診療の経過や方針決定・検査結果を書き添えたいと思ってお返事の時期がずれてしまうということがあります。すこしお時間いただけますと幸いです。
紹介していただいた方は、基本的にはほとんどの方が治療終了すれば、かかりつけの先生方のところに戻っていただきます。子宮内膜症の治療経過、子宮筋腫術後の妊娠の有無など術後の経過についてお伺いする場合があるかもしれません。その際はお忙しい中とは存じますが、ご協力いただけますようよろしくお願いいたします。

 

●まとめ

 

今回は第二赤十字病院の 衛藤 美穂先生への取材をさせて頂き、特に印象的だったのは、旦那さんとのお話です。

通常、女性医師の場合は医師や医療関係者との結婚をされるケースが多いですが、先生の場合は全く違う職種であるということ。

そして、先生が仕事に出て多忙でも旦那さんが子育てや家事についてしっかりとサポートをされている点です。

女性医師で能力が高く、医療機関で活躍している方が家族や家庭の問題で、仕事に打ち込めなくなってしまうケースを良く見るので、このように助け合う関係性をもって、いい仕事をされているのが素晴らしいと思いました。

こういう良いパートナーに恵まれることもいい仕事をしていくには大事なことなのだと改めて感じさせて頂きました。

長時間に渡り、取材に真摯に答えて頂きました 衛藤 美穂 先生にこの場を借りて厚く御礼を申し上げます。

(取材 池上文尋)

 

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京都第一赤十字病院 産婦人科 松本真理子先生

京都第一赤十字病院 産婦人科 松本真理子先生

 

今回は、京都第一赤十字病院の松本真理子先生にお話をお伺いすることができました。

 

こちらの病院は地域の拠点として京都唯一の総合周産期母子医療センターやMFICU、NICUを有しているだけでなく、女性の年齢に応じた疾患に対して丁寧な治療を行われています。

 

その中でも松本先生は産婦人科の医長として、周産期医療や遺伝カウンセリングをご専門とされ、幅広い活躍をされていらっしゃいます。

 

それでは、松本先生のお人柄も垣間見える取材内容をご覧ください。

 

●はじめに、医師になられたきっかけを教えてください。

 

正直にいうと、医師に特別な憧れがあったわけではありません。

親は違う職業だったのですが、「医師になったら?」と子供の頃から言われ素直に受け止めていたことと、それがどこかで引っかかっていたのが大きいですね。

 

●数ある診療科の中から、産婦人科を選んだ理由をお聞かせください。

 

第一印象というか、5回生で色々な診療科を回った時に、自分に向いていそうだと思ったからです。楽しそう、と思いました。

 

●産婦人科医を選んでよかったと思いますか?

 

思います。お産は好きだなとすごく思います。妊婦検診も楽しいですね。

妊娠・出産の喜びを共有できるのは、なんとも幸せな仕事だと感じます。

ただ、判断を間違えると、とんでもなく悪い結果になる怖い部分もあります。だからこそ、経験を積んでより良い周産期管理をできるようになりたいと思います。

 

お産でも婦人科手術でもそうですが、起承転結がはっきりしていて、分かりやすい結果がついてくるところは産婦人科の魅力かなと感じています。

 

●ちなみに、第二志望はどの診療科だったのでしょうか?

 

眼科です。オペをして目に見えて良くなるといったところがいいなと思いました。でも、細かい手術は私には難しいかもしれないなと。

 

整形外科や外科も見ていて心惹かれましたが、男社会だし私には無理かなと思いました。

 

●産婦人科の中でも、周産期や腫瘍、不妊などが多岐に渡りますが、総じて好きなのでしょうか?

 

周産期が一番好きです。

病院の規模が大きいと外来やオペレーターをする機会はあっても、ごく普通のお産というのはどうしても若い先生が中心になります。今は、私自身はあまりお産をしていないですね。

それはそれで寂しいな、と感じます。

 

現在、出生前診断に特化した専門外来も担当させてもらっています。周産期に関わっている誰もが出生前診断は避けては通れないと思います。出生前に様々な疾患が診断されることで、妊婦さんは様々な選択をしなければならなくなります。出生前診断外来では、できるだけ正確な医学的情報提供を行うとともに妊婦さんの不安や葛藤を支えながら、意思決定を手伝わせてもらっています。真に中立的な立場で、妊婦さんとその家族にとって最良の選択を導くのはなかなか難しく、この分野は目下修行中です。

 

●日々の健康管理や気分転換は、どうされていますか?

 

特別な運動はしていません。よく食べよく寝るように心がけています。

この科において睡眠不足は日常茶飯事ですけれど。

 

気分転換は、市民オーケストラでビオラを弾いています。

日常を忘れられる時間であり、細々でも続けてこられてよかったと思っています。

 

●医師の世界はどちらかというと男性社会なので、女性医師に対して環境を整えるという部分がまだ遅れているという記事がありましたが、先生からみてそのあたりはどう思われますか?

 

遅れていると思います。

私は子供もいないし、家庭があるわけでもないので、そういう立場からものを言うことはできません。しかし、同僚の先生などを見ていると、すごく優秀であっても働き方をセーブしていますし、責任ある仕事ができないことや当直できないことを残念に思っているように感じます。

 

仕事と育児、どちらかを優先するとなると、親や夫からのそれなりの援助がなければ仕事を優先して動くことは難しいのだろうなと思います。院内の託児所などの充実も必須ですが、それだけで解決できることではないですよね。家に帰っても育児があれば、体力的にも気力的にも消耗しますし、仕事をそれまでと同じようにできないのは当たり前だと思います。時短勤務や当直免除も必要と思いますが、そうした働き方が同僚の負担を増やさないようにするには、少ない人数の中ではシステム作りが容易ではないと感じます。

 

●現在は病院で勤務されていますが、今後のキャリアを考えていく上で、どのようなビジョンをお持ちですか?

 

ここの病院にきた理由は、資格が取りたいと思ったのと周産期の経験を積みたいと思ったためです。

周産期と超音波の資格取得を目指しています。

周産期に力を入れている病院での勤務経験が乏しかったので、総合周産期センターで働いてみたいと思いました。見たことのない症例をみてみたかったですし、重症妊娠の管理経験は今後に役立つと思っています。

 

将来的には、出生前診断をしながら周産期に関わるのがいいかなと思っています。

 

●資格の取得にはどのくらいかかるのでしょうか?

 

周産期についてはもう1年くらいで資格を取る権利が得られるでしょう。超音波の資格は後3年くらいかかります。

第一日赤はここでなければ経験できない症例がたくさんあります。経験もさることながら、症例豊富なのでやる気さえあればいくらでも学会発表できるので、資格取得には非常にいい病院だと思います。

ただ、日常業務が忙しくて時間がうまくやりくりできていないのですが・・頑張ります。

 

●これから産婦人科になりたいと思っている学生の方に向けて、産婦人科の魅力を教えてください。

 

産婦人科は、起承転結がはっきりしている分野が多いです。やったことに対して患者さんが喜ぶというとても分かりやすい結果がついてくるというのはすごくいいな、と思っています。私は、今後も一臨床医として働き続けると思います。たくさんの症例を経験しながら少しずつでも自分自身の成長を感じられるのは幸せだと思います。

 

●大きな病院だと色々な開業医の先生が関わると思いますが、連携している他の先生方へのメッセージがあれば。

 

先進的な医療を提供することと救急疾患を診るのがここの病院の使命です。

MFICU・NICUもありますし、救急体制もしっかりしています。スタッフや他科の先生方との連携も非常にいい病院です。救急疾患や周産期、腹腔鏡手術、婦人科腫瘍、骨盤臓器脱など当科の得意分野は多岐にわたります。

細々ですが、出生前診断も行なっています。NIPTや胎児MRIのような当院でしかできない検査も提供できますので、気軽に紹介していただけたらと思います。

 

今後ともよろしくお願いいたします。

 

<参考>京都第一赤十字病院 産婦人科

(取材 池上文尋)

 

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京都大学医学部 産科婦人科 安彦郁先生

京都大学医学部 産科婦人科 安彦郁先生

 

今回は京都大学医学部産科婦人科の安彦郁先生に取材をさせて頂きました。安彦先生は女性医師であり、臨床、研究、そして子育てと日々忙しく活躍されています。

 

女性が輝く社会づくりということで、国も様々な試みを行っていますが、このように第一線の先生にお話を伺うことにより、気づく事も多いのではないかと私自身このインタビューをとても楽しみにしておりました。

 

それではインタビューの様子をどうぞ!

 

●お医者さんになったきっかけを教えてください。

 

両親が医師だったのでなんとなくそれ以外の職業が思いつきませんでした。両親は、産婦人科ではなく、父が整形外科で母が麻酔科です。両親とも開業医でないので継ぐ必要もなく、好きなことをやったらいいという感じでした。

 

出身は高校までずっと京都です。大学は大阪大学で、大学院は京都大学です。

 

●阪大を卒業して京大に入局するのは珍しいですよね。

 

そうですね、阪大にそのまま入局する人が多く、特に当時はストレート入局時代だったので、私のような例はとても珍しかったです。

 

●なぜ京大に?

 

家が京都だったので。(笑)

当時入局先は6年生のときに選ばないといけなくて、必須ローテート研修はなかった時代でした。手術がやりたかったのと、腫瘍に興味があったので、どちらかというと阪大は周産期に強かったのに対して、京大は腫瘍に強かったこともあり、京大に決めました。

 

●産婦人科を選んだ理由は?

 

最後まで産婦人科と泌尿器科とで迷っていました。泌尿器科も産婦人科同様、手術やホルモン療法など治療法が沢山あり、進んでいると思いました。移植など他の科にない分野もあって面白いなと思っていました。

ただ、泌尿器科は当時男の先生ばかりで、患者さんも男の人が多く当時はハードルが高いかなと思いました。

 

でも、内科など手術しない科は考えなかったですね。それは両親の影響かもしれないです。医者=手術というイメージがありましたので。

 

なにも産婦人科のような忙しい科にしなくても、と父からは言われました。

 

●産婦人科を選んでよかったですか?

 

とてもよかったです。ずっと飽きないですし、どんどん進歩しているので終わりがない。例えば癌の手術も若い頃は、漠然と10年ぐらいしたらマスターできるのかと思っていましたが、10年目を過ぎても、腹腔鏡をやったり、ロボットを使ったりと課題がずっとあります。ロボット手術も勉強していますが、今は助手のライセンスしか持っていません。今度研修を受けに行きます。京大はロボット手術にも力を入れています。

 

●女性医師として、仕事と家庭の両立は?忙しい中で時間のやりくりの方法は?

 

小学生の子供が1人います。夫は医師ではなく会社員です。今京都に住んでいますが、夫は神戸の会社に勤めているので長距離通勤してもらっています。片道2時間くらいかかるので、6時30分には家を出ています。平日には頼れないですが休日には助けてもらっています。

 

職場の方には本当に助けていただいています。大学は急な休みにも対応してもらえるので助かります。今、スタッフの中で子供がいる女性医師が13人中3人で、優遇していただいています。

 

例えば、当直を少なくしてもらったり、長い手術で19時をすぎるような場合は交代していただいたりしています。男性の先生には負担をかけていると思いますしそこは難しいところですが、理解していただいています。

 

また、大学は入院患者の主治医が1人ではなく、2人以上いるので、お互いにカバーし合うことが出来ています。

 

●大学病院では、教育の仕事もありますか?

 

教育の部分では学部生の講義は1年に1回くらい。今年産婦人科医になった人や大学院生の研究の指導がメインです。京都大学は小西先生の下、教育もチームワークよくやっています。

 

●子供が生まれて出来なくなったことは?

 

夜のみにいくことと、遠方の学会などに参加することは難しくなりました。

 

●情報収集はどうされているのですか?

 

海外の学会への参加はまず無理なので、参加した先生にレポートしてもらっています。

国内の学会参加は日帰りで、近畿圏や東京くらいなら。でも、去年は岩手だったので難しかったです。大きい学会は託児室があり、子供が小さいときは連れて行っていましたが、小学校に上がったら子供が平日休めなくなったので出来なくなりました。

 

●eラーニングがあればいいですよね?

 

技術的にはeラーニングは可能だと思いますが、参加しないといけない学会が多いですよ。認定医の維持や取得のために必須の教育セミナーが多いです。

 

セミナーが朝の8時50分からあると、前日に入らないといけない。もし午後からにしてくれたら子供預けてからいけるのですけどね。あまりこういう発想は学会を企画する先生方にはないのでしょうね。圧倒的に男性が多いので。

 

●そういった細かいところを変えていくことも大事ですよね。

 

産婦人科は女性が多くなりますので特に。男性でも、奥さんと共働きの方も増えてくるので、男性だがら女性だからという問題ではなくなってくると思います。そうでないと続けられなくなります。

 

●自分のプライベートの時間は?ストレスがたまることは?

 

子育てと両立することは、メリハリが出来て逆にいいと思っています。時間があると、精神的に引きずってしまいます。治療がうまくいかない患者さんのことをずっと考えてしまったりします。子供がいると、強制的に切り替えないといけないので逆に精神的に楽になると考えています。

 

●健康のために特にやっていることは?

 

好きなことやっているって感じですね。(笑)

趣味は楽器をやっています。医師でやっている方は多いですよ。

 

●産婦人科を目指す学生さんに向けてメッセージを。

 

楽しいですよ。産婦人科の中にもいろいろな仕事があり、種類が豊富なのでその中で自分が好きなことが見つかると思います。

 

周産期と、腫瘍、生殖の3つの中にもそれぞれいろいろな仕事がありますし、女性ヘルスケアなどの分野もあって、まだまだ進化していくと思います。

 

女性としてのメリットは、女性医師が働きやすい現場で需要が多い。同じ能力なら女性医師のほうがいいという患者さんが多いので、女性であることも売りの一つになります。

 

●お仕事の待遇面で遜色はないですか?

 

そうですね、女性医師が昔から多い分野なので。

例えば脳神経外科など女性医師が少なかったところからは、今でも女性医師をどう扱っていいか分からないと聞くこともありますが、産婦人科は先輩がたくさんいるのである程度ノウハウがあるのは心強いです。まだまだ変えていかないといけない部分もありますが。

 

楽しく働いているところにしか人が集まらないので、私たちも楽しく働いていると示さないといけないと思っています。

 

仕事のストレスは量ではなく、仕事をコントロール出来ているかどうかだと思います。
ただ、一人ではどうすることも出来ない時もあるので環境を整えることが大切だと思います。

 

●安彦先生の未来ビジョンを教えてください。

 

婦人科がんの治療や研究が面白いのでずっとそういう仕事にはかかわっていきたいと思っています。ただ、そのうち変わるかもしれないですけど。

 

8年くらい前までは、がちがちにビジョンを決めていました。大学に戻ってきて小西先生と面談した際に、自分の思い通りにならないときもあり、あんまり固めすぎず流れに任せたほうがいいときもあると言われたのがきっかけで、あまり考えすぎないようにしています。信頼している方のアドバイスを受け入れていこうと思っています。自分の知っている情報は意外と少ないので、他者の意見を聞くことがいいと思っています。

 

●京都の産婦人科の先生方や一般の方へのメッセージをお願い致します。

 

京都の産婦人科の先生方には大変お世話になっています。今後も協力してやっていけたらありがたいと思っています。

 

大学の役目として他で出来ない治療を引き続き追求していきたいと思っています。

 

京大としては、医師になってからの教育に特に力を入れているので、広く来ていただけたらなと思います。患者さんをハッピーにして私たちもハッピーになれるように頑張っていきます。

 

最後に

安彦先生とお話をしていて感じたのは、お仕事もご家庭のことも楽しんでおられるということです。きっと時間的な制約ややるべきことの多さの中でどうやって効率よく動けるのかを考え、実践されているのだと思いますが、それを苦ではなく、自分の楽しみとしてやられている様子が印象的でした。

 

また、忙しいからといって、自分の研鑽をおろそかにすることもなく、新しい技術や知識の習得に余念がない姿勢にも感銘を受けました。

 

また、このようなやる気のある女性医師をバックアップしようとする京都大学産科婦人科教室の雰囲気や環境が素敵だと思いました。女性に最も近しい診療科が女性医師の職場環境を良くすることは社会の規範にも結び付く事になるなと感じました。

 

安彦先生、お忙しい中、取材に応じて頂き、誠にありがとうございました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 

(取材 池上文尋)

 

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京都府立医科大学 産婦人科助教 森泰輔先生

京都府立医科大学 産婦人科助教 森泰輔先生

 

このシリーズでは今まで教授と会長ということでベテランの先生方を取材させて頂いた訳ですが、ぜひ若手の先生方を取材してみたいということで、今回は京都府立医科大学産婦人科助教の森泰輔先生にインタビューをさせて頂きました。

 

それではインタビューの内容をご紹介させて頂きます。

 

●お医者さんになったきっかけ、産婦人科医になったきっかけを教えてください。やはり、ご実家が産婦人科をされていらっしゃることがきっかけだったのでしょうか。

 

森先生(以下M):そうですね。親が産婦人科医であったことはやはりきっかけになっていると思います。医師を目指すことについては親からは一言も言われなかったのですが、中高校時代は周りの友人達からそのように見られていて「自分は親とは違うんだ」といった反抗心をずっと持っていました。

 

結果、友人とだらだら遊んだり、学校や塾をさぼったりしていました。結局、逃げていたのでしょうね(笑)。大学で大阪に出たことで一つの転機でした。親の存在を忘れることができたのと同時に、本当の意味ではじめて親に感謝できるようになったと思います。

 

●二代目、三代目の先生方のお話を伺いすると、親の存在が大きいので、最初はやはり反抗するけど、結局いろいろなことがわかってくると、そっちに行くという方が多いようですね。

 

M:中高生の段階ではっきりとした意思表示できる方もいらっしゃると思うのですが、私は精神的に未熟だったのでしょうね。大学生になってはじめて物事を客観的に見れるようになったと思います。

 

大学の臨床実習で興味を持ったのは消化器外科、泌尿器科と産婦人科でした。外科系に興味があったんですね。産婦人科は中でも花形でして、大勢の先生達がおられ楽しそうに見えたのです。家業もそうでしたので自然とこの道を選択しました。

 

入局先は大阪医大と京都府立医大ですごく悩みました。大阪医大の産婦人科の雰囲気がとてもよかったんです。でも、祖父は本学出身ですし、父は祖父亡き後継承し、長年お世話になっています。産婦人科を選択した時点でやはり継承などを考えるとしたら、京都府立医大でと思いお世話になることを決めました。

 

●大学時代、泌尿器科や消化器外科も選択肢に入っていたということですが、そういう方にもご興味があったということですね。

 

M:外科は面白いなと思いました。私は飽き性でいろんなことがしたい人間です。黙々と外来をし続けたり、研究に没頭したりするのは無縁だと思っていました。外来・検査・手術・救急と一日があっという間に終わり患者さんに対峙し喜ばれるのはその3科だと感じました。もし親が産婦人科医ではなかったら、消化器外科や泌尿器を専攻していたかもしれません。

 

●産婦人科医になって改めて気がついたことはなんでしょうか。子供の頃、お父さんの森先生の仕事を見ていたイメージと、実際にお仕事に就かれてから気がついたことなどはありますか。

 

M:父は自分の仕事内容について一切私に話したことはありません。また、私が父の仕事場に足を踏み入れたことは実はつい最近まで一度もありませんでした。どういう仕事をしているか具体的に知らなかった分、自分にとって産婦人科学すべてが新鮮でした。

 

父は70歳を優に超えた今も昼夜問わずクリニックで出産されるすべてのお産に立ち会ってかつ毎日朝夕外来をしています。これがどれだけ難しくしんどいことかを、年月が経つにつれ、実感しております。

 

●先生は、いろいろ賞を取られていらっしゃるようですが、研究でどういうことをされていらっしゃるのでしょうか。研究のきっかけやこれから興味があることなどを教えていただけますか。

 

M:関連病院に数年出向した後、仲のよい先輩達が大学院にいるからという単純な理由で大学院に進学しました。木下由之先生に研究の手ほどきを受け、研究の意外な楽しさや論文を書く難しさを初めて体感しました。木下先生から米国で研究生活するよう勧められ、本庄前教授を介して留学の流れを作っていただきました。当時、産婦人科は社会的危機的状況ではありましたが、快く歓迎していただいた医局・同門会の先生方には感謝の言葉しかありません。

 

2年間の留学後、北脇教授の新体制となり帰国しました。帰国後、旧医局や研究室のあった建物は取り壊され、まさにすべてが新しい環境でした。古い機器や冷凍庫などは廃棄されてました。PCR機器や試薬一つない環境で、研究するマンパワーも北脇教授と自分のみでした。とにかく、自分に課せられた使命は、府立医大における研究の火を絶やさないことと考え、微力ですが細々と研究を再開しました。


北脇教授の指導の下、大学院進学を希望する人材を少しずつ確保し、今はようやく10人程度の所帯になってきています。本学は基礎研究にどっぷり浸かるといった人よりも将来的に臨床に復帰したい人がほとんどです。できるだけ臨床的疑問を持って、それらを研究的アプローチを持って明らかにするように指導しています。

 

その結果、最近では大学院生達が日本産科婦人科学会の高得点演題や優秀論文賞、府立医大学友会賞(青蓮賞)、その他関連学会の優秀演題賞を受賞しており、喜ばしい限りです。

 

研究内容は、本学はホルモン関連の研究を伝統的に行ってきました。われわれは引き続き、子宮内膜症、更年期/女性心身症、子宮体癌におけるホルモン/ホルモン受容体の役割を明らかにして新しい検査法や治療法の確立を目指しております。

 

●ドクターになりたい人に向けてのお話になりますが、大学病院の先生は、教育者という面と臨床医師としての2面性をお持ちで、かなり忙しいと思うのですが、本当のところどうなんでしょうか。

 

M:忙しいです。本来は教育と臨床の担当者は個別にすることが理想です。しかし、特にわれわれの分野では「臨床の現場に携わらない人でないと良い教育を施せない」と思います。結局、自分たちが頑張るしかないんだと思います。臨床、教育、研究、何でもやるぞといった気概を持ったメンバーが大学に集結できるような環境を作ることが大切と思います。

 

●そういうやる気のある人が集まってきているから、いろいろなことできるということですね。

 

M:やる気のある人が一丸となって頑張っている姿をみて、人はその組織に入ろうするのだと思います。入局者を増やすにはわれわれがどれだけ生き生きしているかが大事です。若い人は大学の若手医師を見て自分の将来をイメージしますので、卒後8~15年目のわれわれの生活や仕事の充実が一番大切です。

 

●医学部の教育は、ドクターのその後の人生を大きく左右することですよね。

 

M:ちょっと大袈裟かもしれませんが、そう思います。臨床、研究をやってこそよい教育ができ、その教育を受けることでよい医者への道しるべになると思います。そして教育された医師がさらに後進を指導する、そうしてはじめて伝統になるのでしょうね。

 

●プライベートはあまりないかもしれませんが、プライベートはどのように過ごされていらっしゃいますか。ストレス解消法はいかがですか。

 

M:休日はわずかしかありませんが、できるだけ家族と一緒に過ごすようにしています。子どもは3歳と1歳のかわいい盛りでとても癒されます。産婦人科はどうしても当直が多いのですが、「自分のために自由に使える時間」とポジティブに捉え、仕事をしたりテレビを見てリラックスしたりしています。

 

案外、私は当直することはそんなに嫌いではないです。ストレス解消法はランニングをしています。朝や夜に鴨川を1時間ほど走ります。職場が鴨川に隣接しているのが嬉しいですね。汗をかくとすっきりして疲れが吹っ飛びます。

 

●最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

 

M:産婦人科って面白いと思います。ゆりかごから墓場までと言われるとおり、赤ちゃんを取り上げたり、最期を看取ったりします。ホルモン療法もしますし外科手術もします。それらすべての瞬間で我々医師の判断によって治療のアウトカムが変わってきます。

 

非常に重いですが、やりがいは最上のものです。一緒に頑張ろうと思う人が一人でも多く、わいわい楽しく仕事できる環境を作ることを目標に大学で仕事をしています。こんなに面白い科なのになぜみんな入ってこないのかなと思います。本気で取り組めば、しんどいと感じる暇なく面白いです。みなさん、一緒に頑張りましょう!

 

最後に
今回、森先生にインタビューをさせて頂き、大学で臨床と教育の両方に関わる若手の先生方の仕事量の多さやその責任の重さを実感した反面、それは凄くやりがいのある素晴らしい仕事なんですと言いきられている姿を見て、ある意味、感動しました。

 

今、過酷な医療現場での仕事の仕方がメディアに取り上げられ、その板挟みになってい最善性の現場で大変な状況ながらもやりがいを持って仕事をされている様子にこういう先生がおられる限り、日本の医療は大丈夫だなと感じました。

しかしながら、日本の医療と取り巻く環境は悪くなる一方ですので、このようなやる気のある先生の声をどんどん吸い上げるような国の医療制度で合ってほしいなと思った次第です。

 

森先生、お忙しい中、取材に応じて頂き、誠にありがとうございました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 

(取材 池上文尋)

 

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田村秀子婦人科医院 院長 田村秀子先生

田村秀子婦人科医院 院長 田村秀子先生
京都産婦人科医会 2018・2019年度会長

 

池上(以後Iにて表示):会長になられた先生の抱負をお願いします。

 

田村秀子先生(以後Hにて表示):全国産婦人科医会において初の女性産婦人科医会長ですから、女性目線を期待されていることもいろいろあると思います。しかし、女性か男性かということよりも先に、我々産婦人科医としてやらなければいけないことが沢山あります。ご存知の通り、京都は特殊出生率が全国で最下位の東京の1.15に次ぎ2番目に低く、1.24です。その改善は府を上げて取り組まねばならない課題であり、産婦人科医の役割は重要と考えます。

 

 

<少子化問題>

 

少子化対策を考えたときに、短期的な少子化対策にはなりませんが、妊孕能には期限、限界があるということを確実に知っていただいて、高校生の女の子たちにも、男の子と同じように10代のうちに自分の人生設計を考えてもらいたいと思っております。ワークアンドライフバランス、つまり、将来自分が子供を産んで仕事をすることを考えたときに、何の職業を選ぶのか、そしてどこの大学に行き、どこで就職するのかを考えてほしいのです。

 

女の子も、どこでもいいからとりえず大学を出てくればいいというわけではなく、またIターンUターンというのではなく、地元で、親の助けを得ながら、早いうちから子供を作るということも一つの選択肢として具体的な人生設計を立てていってほしいのです。

 

行政が「子育て支援をして、待機児童がいないようにする」ということも必要ですが、そこに至る前に、まず「自分の力で自分の道を切り開いていって、自分たちの人生設計をしていく」というスタンスを、女の子が持っていくようになってほしいのです。今まで学校教育の中でそういう観点からの教育はほとんどなされていないので、そこに産婦人科医がタッチしていきたいと思っています。

 

やっと文科省も妊娠のしやすさと年齢の関係や、不妊に関する内容を初めて盛り込んだ高校生向け保健教育の副教材を作製し、8月から配布するそうです。しかし、決して十分な内容ではありません。授業の中の10分ほどでさらりと流されてしまっていいような内容ではないのです。そこを私たち産婦人科医が、いかに高校生の心に響く、心に残る話をしてあげられるか、そういうことが重要だと思っています。

 

 

<産婦人科医減少の問題>

 

産婦人科医は非常に少ないと言われており、産婦人科の医療崩壊と言われています。分娩施設が減ってしまっています。女性医師が増えても、産休等でお休みしたり、リタイアしてしまったり、女性医師が当直医師数として数えられないことによる医療の崩壊も問題としてはあります。

 

産婦人科医が特別ハードだとは言わないが、女性医師がしっかりとワークライフバランスを考えて、子育てをしながら仕事をフルタイムで全うするというライフスタイルができれば、働く女性にとってのひとつのモデルケースになります。その手助けになる何かをしたいと思っています。そのために必要なことは、まず産婦人科の保険点数の改善でしょう。産婦人科は保険点数が低いので、ある程度集客をする必要があります。女性の健康寿命を延ばすためには、産婦人科の敷居を低くして、産婦人科に若いうちから訪れてもらうことが必要です。

 

 

<女性のかかりつけ医としての産婦人科>

 

女性のヘルスケアを考えると、思春期の生理不順、月経困難症、望まない妊娠、避妊、不妊の問題、子宮内膜症、子宮筋腫、そして、更年期、老年期の問題・・、そう考えていくと卵から墓場までという女性の全ての健康を包括的に担うのは産婦人科医であり、産婦人科医が全てを総合診療的に診ていき、その中で必要なときに、専門の内科、外科、整形外科、眼科等に割り振っていくという形が理想的なのではないでしょうか。

 

女性のかかりつけ医としては、産婦人科医が一番適切なはずなのです。

 

ですから産婦人科医が女性のヘルスケアを担う力があるということ、それをみんなが目指しているんだということを、世の中の人たちに知ってもらわなければいけないのです。そのためには、産婦人科はただ内診を受けて、腟炎や妊娠しているかどうかを診てもらうためだけにいくところではなく、内分泌疾患としての月経不順や更年期、老いを考えると、もっと内診することを目的としない産婦人科の受診もあるということを一般の方々に示していきたいのです。

 

ウーマンヘルスケアとして、医師にアピールするのではなく、外に向かってアピールをする産婦人科医会にしたい、というのが私の目標です。

 

前会長大島正義先生が、年に数回だった研修会を、年30回以上開催するというように、ドクターに勉強の場を提供することに力を注いでこられ、実現なさいました。また産婦人科医会が性教育に関与していく礎を築いてくださいました。これからはイーラーニングという形で、ドクターに学会研修会にご参集していただかなくても済む時代がやってきますので、医会としてはそのぶん余力ができますから、一般や行政にアピールをすることに力を注ぎたいと考えています。

 

 

<産婦人科の視点からの医療費削減>

 

産婦人科の必要性と医療費削減についてもアピールしたいです。予防的医療として、東邦大学名誉教授、日本不妊予防協会理事長の久保春海先生が仰っている不妊予防は、女性の心的疾患となりうる月経前症候群の治療や未妊や未産とならないよう子宮内膜症を予防するためにピルを啓発していくことは、医療費削減につながるわけです。予防医療としての婦人科の重要性もアピールする項目の一つですね。京都府、京都市や教育委員会などに働きかけて、理事の先生方のお力をいただいていろいろな講演会や研修会でドクターを派遣してお話をしていていただくということを始めています。

 

 

<研修会へのご参加>

 

会員の先生方には、お忙しいのは重々承知してはおりますが、ぜひ研修会にご参集いただきたいとも思います。若い先生方にももっとお越しいただきていですね。また地元の地区の保健所などから講演などの依頼があったら、会員の先生方のお力をお貸しいただきたいと思っていますし、学校から子供たちにお話しいただけないかという依頼がきた場合、お出向きいただいて、避妊の方法やいくつまで妊娠可能か、などをお話していただけたらありがたいです。

 

少し地域でお話をしていただくことが、産婦人科に来ない方に来てもらうようことにつながるのだろうと思います。

行政、教育分野から講演などの依頼が来た場合は基本的には医会理事が参りますが、なかなか 遠いところだと行きにくいこともありますので、そういうときにはその地区の先生方にお願いするかもしれません。そういう時には是非お力をお貸しいただけると本当に助かります。

 

それから7月から、性被害者のためのワンストップセンターが京都で稼働し始めます。京都市内には先生方がたくさんいらっしゃるのですが、京都府下で何か起こった場合や支援センターや警察の方から、先生方のところにご協力依頼やお問い合わせがあるかもしれません。その時にも是非ご協力いただきたいと思っております。

 

 

<京都性暴力被害者ワンストップ相談支援センター(京都SARA)>

 

8月10日に上記が活動開始いたしました。近畿圏内では京都がラストですが、全国的にいうとまだ20幾つしかありません。24時間体制になれるところはまだ少ないですね。実際に作っても稼働しているところは少ないと思います。京都は京都方式とでもいうのでしょうか、病院拠点型でも相談センター拠点型でもなく、相談支援員が核となり、各連携機関をつないでいく、という方式です。

 

今年度も9月から支援員要請講座が始まります。これらの情報発信は、行政からも行っていきますが、医会も積極的に関わっていきたいと思っています。京都は学生の街だからでしょうか、性犯罪は全国的に見ても多いほうです。性犯罪においては証拠の採取が一つの大きなカギとなります。初動、の観点からも産婦人科医の担う役割は非常に大きいものだと思います。

 

性犯罪抑止のためには産婦人科医の力が欠かせません。会員の先生方にはぜひご協力いただき、性犯罪撲滅の一翼を担っていきたいと思います。6月に警察と産婦人科のネットワーク研修会で、性被害者の証拠と採取の研修会を行いましたが、今後も症例検討などを含めて研修会を計画してまいります。

 

 

<妊産婦メンタルヘルスケア・0歳児虐待防止>

 

日本産婦人科医会が重点項目として掲げている問題の一つに、「妊産婦のメンタルヘルスケアと0歳児虐待防止」があります。妊産婦のメンタルヘルスケアをすることによって、0歳児の虐待を減らすということです。幼児虐待の中で一番多いのは、0歳児虐待です。つまり、生まれて1ヶ月以内の子に手をあげてしまうということで、それはやはり望まない妊娠から来るが多いのですね。

 

望まない妊娠は何なのかというと、一つは多産の場合、一つは妊婦の精神疾患、一つは貧困、もう一つは若年の妊娠ですね。産婦人科医として積極的に防止していける可能性があるのは若年妊娠です。

 

全国的に中絶の人数は減っています。出産数も20数年前に比べて半分、1年間190万が100万まで減っています。全体的に中絶の人数は減っているのに、15歳までを見ると中絶数は増えて、そして減っていない。かつ15歳以下、つまり小中学生の出産は年間500件近くあります。16歳を超えると結婚が認められているので、望んで妊娠・出産をしている人もいます。

 

ところが、15歳以下は婚姻がまだ認められていないので、妊娠は望んでしたものは非常に少ないでしょうし、出産している人は気がついたら22週以降であったために出産をせざるを得なかった人たちで、それは知識のなさに起因するものです。そういう形で妊娠し出産した子供たちの一生も大きく左右されます。生んだ子供たちは0歳で虐待されている可能性もありますし、親が子供ですので、子供を育てる力がなく、ネグレクトになっている可能性も高いわけです。それは16歳17歳も同じです。16歳、17歳で子供を生んだ子供達の9割は結婚しても離婚するといわれています。

 

そうやって、母子家庭をつくり、貧困になり、それが虐待に繋がっているということにもなりうるわけですね。16歳17歳で望んで妊娠出産をすることが悪いことではないかもしれませんが、避けた方がよかった症例も少なからずあるはずなのです。妊産婦のメンタルヘルスケアを考えるだけでなく、0歳児虐待や少子化対策にも繋がることだと思います。この観点からも適切な性教育が必要です。

 

 

<女性の包括的支援に関する法律>

 

女性の包括的支援に関する法律が超党派で決まるはずです。民主党以外は賛成しています。その中で医療の問題として若いうちに産んで欲しいという意味の言葉は却下されたようです、こういう言葉は、女性議員が反対します。国会議員の幹部になっている女性議員の中には、ジェンダーに厳しい方が結構いらっしゃいます。「産めということか」ということになってしまうようで、「いい時期に産んでほしい」というニュアンスの言葉を削除しなければいけなかったようですが、そこは政治家としては言えなくても、産婦人科医として「いい時期というのは、こういう時期なんだ」ということを声高に叫んでいきたいと思っています。

 

 

<理想の子供数を得るために>

 

結婚して、子供を望んでいる人たちの理想の子供の人数は2.1人です。でも、現実は 1.89人という状態です。描いた人生設計の理想の子供の人数を実現することが難しくなっているということでしょう。小1の壁があり、2人目不妊など・・・2人目を躊躇するというのが、75%いるということです。

 

それは、一人であれば、なんとか保育園に預けて仕事をすることも可能ですが、2人を預けるのは大変ですし、お金もかかるし、仕事もダメになるかもしれないという、2人目の壁というのがあるということです。そういう子育て支援をやっていくのは、行政の力だと思います。でも、1人目をいつ生むのかというと、それはアラフォーではなく、アラサーの時が最もよいのですが、今、初婚年齢が29歳で、一人目を生むのが30代後半です。それをシフトしていくためには産婦人科医が人々に周知していただけるように声高に叫ぶことが必要でしょう。

 

結婚したくてもできない人がいるので、昔の日本のとってもよい制度であるお見合い制度のような婚活プログラムとして婚活パーティーなどを地方の行政が支援して一生懸命やっています。そういうところは行政にお任せをしたいと思います。

 

 

<男性に対する妊活教育>

 

生まれてから後のこと、周産期における虐待予防をするために、親の世代、妊婦の教育をすることは、産婦人科が関わるところだと思います。しかし、産婦人科として最も必要なこと、そして、最も根幹で重要な少子化対策は、若い子供たち、女の子の、そして男の子の意識改革です。

 

46歳と44歳のカップルが産婦人科に来て、「自然妊娠がいい」と言って欲しくないのです。そういうカップルを少なくしたい。とてもうらやましい話ですが、45歳の女性と25歳の男性が結婚して不妊外来にこられることがあります。こんな時若いご主人はだま~って興味なさげに座っていることが多い。そんな時はすこし違和感をおぼえることもしばしばです。35歳の奥様が子供が欲しいと非常にあせっているのを見てご主人が漫然と「まだそんなことはいいんじゃないか」という、こんなことを男の人達が言わないように教育を施すべきだと思います。

 

I:今、先生のお話を聞いていて、先生の立場からみると、女性をなんとかしてあげたいと思っていても、男子が稼げなくなって来ていてこれがすごく問題ですね、

 

H:たしかに男性が稼げず、女性が働かなければいけないので、二人で働かなければいけないから、こどもが作れないという悪循環、そんな場合もあるでしょうね。でも、婚外子があってもいいはずなのです。つまり、正式に結婚しなくてもいいと思うのです。男の子は「自分が養うことはできない」と思うから結婚しなくて、女の子は「ずっと働き続けたいわけではなく稼げる男の人と結婚したい」と思うから、そんな人が現れないので結婚しない。そうなると若いうちに結婚する人が減り、初婚年齢がどんどん上がり、生涯独身率もどんどん上がる、そして少子化になる。

 

今、日本の婚外子、つまり結婚していない同棲カップルの子供は2%くらいで、フランスは30%くらいです。結婚していなくてもいいんです。同棲でなくてもお互いのものを持ち寄って、通い婚でもなんでもいいから子供を作ればいいんです。結婚という形態を取らなければいけないと思うから、「これだけ稼がなければいけない」と思って、避妊をせずにセックスをすることができないのですね。

 

ある程度、社会通念として、今の日本の道徳教育の中でも、我々の世代では「そんな・・・」と思われて、一朝一夕には難しいかもしれませんが、今の夫婦の形というのは基本的には明治以降のものでしょう。ですから一夫多妻あるいは一妻多夫でなければ婚外子でもいいという時代は来るかもしれません。

 

事実婚であっても体外受精の助成を認めていくということに本来は戻すべきです。体外受精をするときに、正式に婚姻していなければならないという一文を外すべきでしょう。京都府か京都市どちらかは認めていたのに、26年から認めなくなりました。学会は事実婚を認めて、事実婚でも体外受精をやっていい、戸籍抄本を求める必要はないといっています。弁護士法曹界も、4年間別居していれば婚姻関係とは認められないと言っているのですから、行政も事実婚という形でも補助をしていくべきだと思います。 

 

女性の貧困で年収が200万あるかないか、それで男性も年収300万行かないという人たちが多くなって、でも持ち寄ればなんとかなるかもしれない。でも、やっぱり結婚するんだったら、結婚式にこれだけのお金が必要だとか、結婚して世帯を持つ時には貯蓄がないと・・・・などと全部揃えてないといけないというふうに思うのは、やっぱり法律に縛られた婚姻関係だと思うのですが、現実的な状態を許してしまえばもう少し少子化の部分でのハードルが低くなります。そうでもしないと、やがて人口は8000万を切りますね。

 

I:今までの会長を見てきたらお産の先生方が多いですね。先生が不妊の先生として初めてですね。

 

H:不妊で医会にいる人が少ないからでしょうね。作るところに立ち会っていて、不妊に携わっているからこそ、少子化ということを考えるときに、内閣官房参与、慶応大学名誉教授の吉村泰典先生がかなり言われて変わったように、42歳で助成金が足切りになったのは当然だと思います。

 

そうしなければいけないし、もっと言うと、若い層にはもっと手厚く、35歳以下は10回でもいいと思います。35歳以下は10回、40歳以下は6回、43歳未満は3回などと、若い人に手厚くしていってもいいかなと。あるいは、40歳超えたら本当はなくてもいいと思うのです。その年齢でもお上が助成金をくれるから、だからその年齢になっても十分妊娠する可能性はある、だから遅くてもいいと思ってしまうところがあるんですよね。

 

ここまでしか出しませんよ、と言われたら、みんなはそこで悲鳴を上げると思いますが、そこは痛みを分かちあわなければいけません。そうまでしても意識をシフトさせなければいけないのです。ほうっておくとずっとアラフォーの出産率が高いというのが変わらない状態になってしまいます。少子化も歯止めがかからないし、初婚年齢の上昇も歯止めがかからないですよね。

 

ただ、初婚年齢が上がるのは、みんな準備をしてから結婚しようと思うんですよね。長いこと付き合っている人はいっぱいいます。29歳まで付き合いがないわけではなく、それまで探しまくっているわけですよね。

 

妊活は勢いでいかないといけないのです。勢いで行かなければならないときにみんなは避妊しているのです。

 

農耕民族の男の人は、跨いだら妊娠するようなほど頑張れないんだからね。(笑)だから勢いでガーンと行っている時に頑張るんです。それこそ基礎体温つける必要なくて、会えば寝っころがりたい状態のときにじゃんじゃん作っておけばいい。それが許される状態になってほしい。


江戸時代の長屋なんてそうでしたよね。あっち行ったり、こっち行ったり、浮気がどうこうとかではなく・・・ それがいいわけではないが、そういうような感じで頑張れるときに頑張っていただくということですね。

 

産む機械ということを言った政治家がいましたが、そこだけを取り上げてしまうと「なんだ!」と思ってしまうけど、前後をみると間違ったことを言っているわけではない。産めるときに産める人に産んで欲しい。

 

I:日本の場合、産みたい人にね。産みたい人が多いし、生活のレベルを下げたくないという欲求は強いですね。

 

H:産みたい人けど産めないのは、育てられないから・・・。そしてそれはお金がないからだと、そういう人は言いますよね。それって遊ぶお金がなくなるということですね。じゃあ本当に育てられないのかというと、兄弟の多かった昔はどうしていたんだということになりますよね。

 

昔に比べたら福祉も充実していて、昔に比べて稼ぐお金がそんなにも減っているのかと言ったら、昭和の初めの頃や戦後のことを考えたら、みんなそれ以上にいい生活をしているので、育てられないことはない。ただ、情報社会でいろんな上を知っているから、「これは底辺だな」という生活ができないんですよね。

 

女の子が結婚しないのも「だって、これで子供なんかができたら自分のためにお金を使えないじゃん。遊べないじゃん」ということがアンケートで出てきています。それは、子供をもつことの素晴らしさ、家族をもつ子との素晴らしさを全く自分の中で共感することなく、親の存在もありがたいと思わず、鬱陶しいだけの存在だと思い、友達のつながりに全て左右される生活を送ってきている子供たちに「子供ができなくて、あなたが70、80歳になったときにどういう生活をしているだろうか」ということを考えるチャンスを与えることなく育ててきた弊害なのです。

 

これは道徳教育もなかったし、戦後の民主主義じゃないが、道徳教育を全て否定されて育った世代が親になり、そこに育てられた子供たちは、核家族なので老いを見ていくことを身近でしていないので、今の刹那的なつながりだけが大事だと思ってしまうから家族を持とうとしないんですね。友達がいればいいという・・・。

 

少子化というのは、子育て支援をすればそれでいいのかというわけではない。産める人も産もうとしない。そこを産婦人科医は、ひとりの医師である前に、ひとりの人間であり、ひとりの親であり、そしてひとりの母親であるというので、そういうのを使ってお話すれば、少しは心に響くお話ができるかもしれません。

 

I:今日はとても深い話になりましたね。でもすごく大事ですね。今の問題全てに関わっていますからね。

 

H:そうですね。なかなかこういう活動に関わっていなかったら、何も考えることもなく、ただただ仕事をして、42歳で助成を切ってしまうのはけしからんと思っていたかもしれません。こういう年代になってくると、自分の身内だけにいい顔するとか、自分の不妊の患者さんたちのためだけに貢献するということではなく、もっと広い意味での活動が必要で、それが求められているんだなということを感じています。

 

I:最後の質問ですが、連携をしていかないといけないと思うんですが、大学病院、各機関病院、クリニックなどの連携はどのようにお考えですか。今までどおり、大学を中心としてやっていかれるのでしょうか。

 

H:産婦人科の中でどの分野での連携かによって、全然違いますね。

 

例えば、分娩出産に関しての連携は、京都は比較的うまくまわっています。周産期センターとして第一日赤があり、そこに総合周産期センターという立ち位置で、府立医大があり、京大が入り、国立医療センターがありつながっています。周産期センターとしての第一日赤に電話をすると、そこから病院を探してくれるというシステムになっています。

 

それぞれの京大、府立医大の同窓会としてのつながりもあるので、何かあったときは電話をして、そこから探してもらうという、それぞれ個別の大学と日赤とのつながりが分娩取り扱い診療所、機関病院との連携は結構できているのです。

 

なのでそこは、今あるものを更に充実させていきたいと思います。ただ、この点は医会というよりは、むしろ京都府としての救急診療体制やドクターヘルプという部分で、北部と京都市内をどういうふうに繋ぐか、北部から大阪にどのように繋ぐかという問題がありますので、メインは行政にお願いします。行政に対して、今こういう問題が北部である、とか、南部ではこんな問題が、とかを、京都府医師会とも連携して訴えていく必要を感じています。

 

悪性疾患等の連携ということで言うと、やはり悪性腫瘍を扱っている医療機関はなんでも受けてくれますのでここもうまくいっています。京都は大学が2つしかない分、そこの関連病院もうまく専門領域が住み分けができているようです。

 

また年に一回基幹病院代表者会議というのがあって、そこで京都府内の基幹病院の受け入れ態勢などをすべて開示していただき、会報に載せる、ということをしておりますので、この点では皆様のご協力のもと、京都府は非常にうまくいっていると思っています。

 

まとめ

 

今回は京都産婦人科医会会長に就任されました田村秀子婦人科医院院長の田村秀子先生にお話を伺いました。

 

田村秀子先生とは20年来のお付き合いになりますが、このような地域医療や今後の産婦人科医療についてじっくりと取材をさせて頂いたのは初めてのことで、とても内容の濃いインタビューとなりました。

 

長時間に渡り、取材に真摯に答えて頂きました田村秀子先生にこの場を借りて厚く御礼を申し上げます。

 

(取材 池上文尋)

 

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京都府立医科大学 産婦人科教授 北脇城先生

京都府立医科大学 産婦人科教授 北脇城先生

 

今回は京都府立医科大学の北脇教授に取材をさせて頂きました。私としましては北脇先生が講師の時代にお会いしてから、17年ぶりの面会となりました。

 

現在の京都府下の産婦人科医療について、大学での状況など幅広くお話頂きました。それではインタビューの内容をどうぞ!

 

 

Q)現在の京都府の産婦人科の状況を教えてください。

 

端的に言うと産婦人科の数に対し、医師の数がとても足らないというのが現状です。関連病院は20以上あるわけですが、どの病院も産婦人科医を派遣してくれ~と言ってきます(笑)。

 

自治体病院でも産婦人科医が一人でも多く欲しいが、それを自治体に言っても埒があかないので、大学の産婦人科に直接要望が来るような感じです。

 

産婦人科医の仕事の特徴として夜間の仕事が挙げられます。お産はいつ始まるかわかりませんから。よって、夜間勤務も必要な訳ですが、現在、産婦人科には女性の医師が多いのでなかなか勤務調整が難しい面もあります。

 

よって、夜間実働の産科医がどんどん減っているのです。そのへんがマンパワー的な一つのネックになっています。この問題は日本産科婦人科学会で共通に持っている最大の課題でもあります。

 

それから産婦人科専門医の資格を取るためには都会の病院でないと取れないので、若い先生が地方に行きたがらないという部分があります。京都にはそういう病院があるので、産科医が比較的多いと言えます。京都の産科医療はまだ地方の県よりは恵まれていると思います。

 

 

Q)現在の大学産婦人科の状況はいかがでしょうか?

 

大学についてはお陰さまで人数が増えてきました。私が教授に就任した時点では10名の医局員でしたが、就任6年あまりで27人にまで増えました。現在では大学院生も10名おり、産婦人科医局が賑やかになっているのは喜ばしい限りです。

 

ただ、日本全国でいえば、産婦人科医になる若者の数が平成22年をピークに少し減っているので、出来れば一人でも多く入ってもらえるように色々と工夫をしているところです。

 

産婦人科としては周産期・生殖・腫瘍・女性医学と各分野に渡り、精力的に取り組んでおります。現在、子宮内膜症専門外来、腫瘍、更年期、胎児外来、そして女性外来などを作って、多くの患者さんにアクセスしてもらえるようにしております。

 

それに伴い、腹腔鏡、超音波による出生前診断にも力を入れております。

 

 

Q)地域医療に気を配っているところがあれば教えてください。

 

良い産婦人科医療が津々浦々で実施できるように情報共有を行っています。京都府立医大としては京都府では最も手薄な北部の強化を意図し、昨年4月より府立与謝の海病院を大学病院の北部医療センターと改称して活動しています。

京都府立医科大学附属北部医療センター

 

ただ、先程も申しましたとおり、若いドクターは専門医の関係で過疎地域に行きたがらないですし、子供を持つ女性医師は子供の教育の問題で都市に住みたがる傾向にあります。

 

各ドクター達の状況やQOLを考えながら、人員配置を考えていますが、なかなか難しいというのが今の悩みです。

 

 

Q)京都産婦人科医会と関係

 

京都大学と共に京都産婦人科医会を盛り立てていこうということで活動しております。4月からは本学卒業生でもある田村秀子先生が日本で初めての女性の産婦人科医会会長ということもあり、一致団結して様々な活動を実施していければと思っています。

 

京都の田村秀子先生をぜひ全国の先生方に知ってもらいたいと思っています。

 

それから、京都大学ともいい関係を保っており、ハシイ産婦人科院長の橋井康二先生が中心に活躍されている京都プロトコール(産科救急の初期対応)では共に力を合わせて普及に取り組んでいます。実は昨日も当大学に橋井先生が来られて講習会を実施されたところです。

 

また、京都大学とは同じ教育機関・医療機関として仲良く、そして良い意味でライバルでありたいと思っております。

 

 

Q)今後の将来ビジョンについてお話頂けますか?

 

当大学のモットーは「世界トップレベルの医療を地域へ」ということで、今後もそういう気持ちで取り組んで参ります。

 

産婦人科の基礎研究の魅力を伝えていけると良いなと考えております。

 

それから先ほどお話した子宮内膜症における腹腔鏡下手術は当教室の得意分野なので、症例数を増やしていく予定です。

 

お産においては、妊娠したら誰でも簡単に産めるという安易な気持ちでいる人がおられるようですが、これは大変危険な考えです。妊産婦の平均年齢も高齢化しており、安全で快適で質の高いお産を提供するためにも、今後は集約化・センター化は必要と考えております。

 

それから子宮内膜症の予防医学やアスリート健全発育支援にも力を入れていきたいと思っております。10代の方でも生理痛があるような場合、子宮内膜症が隠れているケースもあるので、臆することなく受診して欲しいと思っています。

 

痛みを耐えるのが美徳と思っている人も多いので、将来の不妊症予防のためにも来て欲しいと思いますし、そのためには母親の考えがとても重要になります。

 

また、アスリートも受診して欲しいと思っています。10代の方でも月経がなかったり不順な人は、放置するのはよくありません。月経周期を調整して試合に臨むことによって最大限の実力が発揮できることもよくあります。

 

内診をするのが嫌という理由で受診を避ける人がおられますが、今は内診をしなくてもエコーなどでわかる時代でもあります。ぜひ気軽に受診していただきたいと思います。

 

通常、諸外国では大きな大会や遠征には必ず婦人科医が帯同しています。日本のナショナルチームでも次第にそのようになってきています。

 

 

まとめ

 

今回は京都府立医大教授の北脇先生にお話を伺いました。若い時の先生を存じ上げているので、年月が経つとどうなられているのかなあと思って伺いましたが、以前にもまして、フレンドリーな感じで、楽しそうにインタビューに答えて頂いたのがとても印象的でした。

 

長年にわたる京都の産婦人科地域医療の要でもあるこの大学医局の持つ意味は大きいと思います。そこを少しでも活発に盛り上げていこうと取り組まれている先生の活動にこれからも注目していきたいと思いました。

 

取材に真摯に答えて頂きました北脇教授にこの場を借りて厚く御礼を申し上げます。(取材 池上文尋)

 

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京都大学 婦人科学産科学教室教授 小西郁生先生

京都大学 婦人科学産科学教室教授 小西郁生先生

 

今後、産婦人科医会WEBサイトでは京都の産婦人科医師の取材を随時行ってまいります。
今回は記念すべき第一回ということで、京都大学婦人科学産科学教室教授 小西郁生先生を取材させて頂きました。それでは取材の様子をご覧ください。

 

本日はお時間を頂戴し、ありがとうございます。早速ですが、いろいろと質問がございますので、よろしくお願い致します。

 

 

Q)小西先生は日本産科婦人科学会の理事長に就任されていますが、今、一番力を入れていることを教えてください。

 

産婦人科のことをもっと多くの方に広く知ってほしいと思っています。そして、中学生や高校生で医師を目指そうという方に産婦人科学をより深く知ってほしいと思っています。

 

医学部受験生が、面接を受ける時に将来の希望を聞くと、半分は内科という答えが返ってきます。医師というと一般的には内科をイメージしてしまう傾向にあるのです。

 

また、テレビの影響から外科医を目指す人、子供の時に小児科にお世話になった方で小児科を希望する人も少数ですが、必ずいます。しかし、最初から産婦人科を目指すという方は非常に少くないです。産婦人科は人材確保の面から最初からハンデを背負っている診療科と言えます。

 

学生時代に産婦人科のことを知り、「面白い!」と興味を持ってくれる学生もいるのですが、同時に仕事がきついということで選択されない場合もあります。

 

そこをなんとか払拭したいということで、産婦人科は面白くて、これからどんどん発展していくってことをアピールするために学会でビデオを作りました。ぜひそれを見て欲しいと思っています。日本産科婦人科学会のホームページに行くとアクセスできますし、Love and Life Station で検索するとYoutubeから見ることもできます。

日本産科婦人科学会 啓発ビデオ

 

 

Q)京都産婦人科医会と京都大学との連携についてお話し頂けますか?

 

京都産婦人科医会の先生方とは本当に仲良くさせて頂いております。極めて順調だと思います。

 

妊娠出産はどんな病気よりも死ぬ確率の高い時期であり、みんなで妊産婦死亡率をできるだけ低くしていかなければいけない。日本は今、世界で最も出産時の死亡率が低い国になっているけどれど、それでも年間10万人に4、すなわち計40人くらい亡くなっている。

 

イギリスは日本の3倍、10万人に12人ぐらい亡くなっている。アメリカは10万人に20人、アジア各国は10万人に50~100人、アフリカに至っては10万人に500人~800人。

 

私が生まれた頃、日本でも10万人に150人は亡くなっていました。この間、日本では産婦人科医が努力をして、世界一、お母さんが死なない国になったのです。

 

これをさらにゼロに近づけようということで、ハシイ産婦人科の橋井先生から「病院への搬送前に何かできることがあるのではないか」ということで相談があり、産婦人科救急の共通のプロコールを作ることになりました。「京都プロトコール」と呼んでいますが、これは大学の垣根を越えて、京都府立医大の北脇教授が中心となり各医師が連携して、技術研鑽と知識の共有を図っています。

 

そこには産婦人科の医師だけではなく、救急の医師も参加してもらって、大事なポイントを学んでいます。そして、その内容を多くの方に知ってもらえるようにマニュアル本を出版したり、年に何回かは人形を使った技術セミナーと症例検討会も実施しています。

 

最近では、「この内容は興味深い!」ということで京都大学法医学の玉木敬二教授まで参加してくれるようになっています。

 

そして、さらにこれを日本中に広めようということで日本臨床救急学会 昭和大学の有賀徹先生とぜひこれを産婦人科と救急が組んでやろうじゃないかと進めているところです。京都から発信したムーブメントが全国に広がりつつあるということです。今後も各関係各位の先生方と協力し合い、連携し合いながら進めて行く予定です。

 

 

Q)若い世代の方々に向けての活動も実施されていると伺ったのですが、具体的にはどんなことなのでしょうか?

 

女性の一生に関わっていこうというのが産科婦人科学会の方針ですが、思春期の頃から大事だと思われる情報発信を積極的に行っていくことが大切と思っています。

 

覚えておられると思いますが、内閣府で女性の健康手帳を作ろうという話が上がった時に頓挫してしまいましたよね。「女性に早く子供を産ませようとしている」という批判が強まりました。それではいけないということで、産科婦人科学会が小冊子を作りました。

 

女と男のディクショナリー「HUMAN+」という本ですが、しっかりとした内容になっています。自治体から要望があれば300円でお譲りしています。成人式などで配布されているようです。値段は安いですが、内容は非常に濃いものになっています。

 

それから、2015年10月、京都で癌治療学会学術集会を行うことになっており、今、準備を進めています。その中でキッズセミナーを行う予定にしています。夏休み頃に実施すると思います。

第53回 癌治療学会学術集会

 

せっかくの機会ですので、この癌治療学会に合わせて、京都ではCancer Month Kyoto 2015と名付けて、京都市内において大規模ながん啓発イベントを開催します。自治体と連携して、市民の皆様に広く「予防」「検診」「治療」の大切さを知ってもらえるように様々なイベントを準備する予定です。

 

ぜひ、産婦人科医会の先生方にも積極的なプロモーションをサポートして頂けるとありがたいです。

Cancer Month Kyoto 2015

 

 

Q)がんのお話が出てきたので、がん治療における卵子凍結・卵子提供などについて最新情報があれば教えて頂けますか?

 

今、京都大学ではそれに関して積極的に実施できるように準備を行ってまいりまして、最近開始することができました。

 

若い世代のがんが増えてきて、抗がん剤治療前に卵子や卵巣組織を保存しておけるように、そしてがん治療後に移植することにより、子供が授かれるようにしたいと考えております。

 

聖マリアンナの鈴木直教授をはじめ、世界各国のがんと生殖医療に詳しいドクターを集めて、イベントや研究会も実施していきたいと思っています。これはとても注目されているところだと思います。京都大学の中でも産科婦人科学会でもこれからどんどんディスカッションされていくことと思います。

 

 

Q)今後の地域医療についてお話し頂けますか?

 

京都府の産婦人科地域医療は京都府立医大が大きな役割を果たしています。京都大学は近畿や日本全国に関係病院がありますので、広域においての産婦人科地域医療の役割を持っています。

 

もちろん、同じ京都にいるので、できるだけ協力し合いながら、地域医療を守っていくことは言うまでもありません。

 

先ほどお話した京都プロトコールや学会などを通じて、先生方同士が触れ合う機会が増え、みんなで地域医療を支えていくようにしていくのが大学の仕事でもあり、産科婦人科学会の仕事でもあります。

 

そして、今までと同様、産婦人科医会の先生方にもご支援・ご助言を頂き、積極的に連携を進めていきたいと思います。

 

 

取材後記

 

今回は非常に多忙な合間を縫って小西先生にお時間を頂戴し、取材をさせて頂きました。
小西先生とお話をしていると、「日本の女性を輝かせたい」「産婦人科を盛り上げていきたい」「若い世代を育てていきたい」という思いが、言葉の節々に出てきますし、実際に様々な活動を実施されています。

 

「とにかく、みんなで協力してやるしかない、みんな応援してよ」という先生の人間的温かさや人徳が多くの先生方や自治体、各企業を巻き込んでのムーブメントに結びついているのかなと感じた次第です。

 

小西先生、貴重なお話をありがとうございました!この場をお借りして厚く御礼申し上げます。(取材 池上文尋)

 

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平成25・26年度会長 大島正義

平成25・26年度会長 大島正義

 

京都産婦人科医会は、京都府・市内の産婦人科医師により構成され、その発足は明治31年6月5日、何と我が国最古の専門医集団です。

 

以来、生命の誕生に係わる妊娠、分娩そして育児における安心安全な環境の提供を目的として活動を続けています。のみならず、思春期から老年期に至るまで、一生涯を通じての女性の健康と福祉の担い手として、最新かつ安心安全な医療情報を皆様に提供する事を目指しています。

 

また全国組織である臨床(診断・治療)の向上を主目的とする日本産婦人科医会、および学問・教育の発展を担う日本産科婦人科学会、それぞれの地方組織として京都府産婦人科医会、京都産科婦人科学会の名称も時により使用しますが、すべて同じ団体と思って下さい。勿論、近畿産科婦人科学会も同様です。

 

産婦人科の役割は、先ずはなんと言っても妊娠・分娩・産褥と新生児のケアです。最近は妊娠中からの母子の支援においても、精神面からも幅広く係わっており、そうした努力が我が国の世界最高水準の母児の安全性を保つことに大いに貢献しているもの思っています。一方、近年の少子化傾向は京都府においても問題であり、京都府の分娩可能な施設は現在63施設と減ってしまいました。しかし医会の活動として地域に根付いた病院と診療所との連携を深める事を重視し、母子の救命、救急医療態勢も整えてまいりましたので御安心ください。医師以外の診療スタッフもその為のトレーニングを日夜行っています。

 

少子化傾向対策の一つとして、不妊症の診断と治療に関して安心安全で最新技術を持つ専門施設の拡充により、従来の治療では成し得なかった不妊症も30%の成功率となっています。また近年は女性ホルモン(内分泌)を中心とした特に思春期や更年期の正しい診断と治療、そして子宮、卵巣、等の良性・悪性の腫瘍を専門とした施設、さらには健康管理としての予防医学とも言える子宮・卵巣・乳房の検診の専門施設もあります。

 

一方で性犯罪の被害者支援においても被害者の立場を守る事を第一として、警察や各種団体とのネットワークも構築されています。

 

保健所や看護師さん栄養士さん等が主催として行われる母子に対する色々な推進事業にも積極的に参画してお手伝いをさせて頂いております。

 

私達は、女性の方々にとって自分の体を良く知って頂く為の最近の正しい医療情報を発信するだけでなく、一生に渡る健やかな人生を歩んで頂く為、お問い合わせや相談事がし易い状況を整えておりますつもりですが、皆様にとって更に身近な存在となりますよう努力致しますので御意見や御批判をお寄せ下さいませ。

 

女性の平均寿命は85歳と上っても、その内の10%強が寝たきりで終末の10年を過ごしているという老人問題、人の癌として初めてその原因が判明した子宮頸癌が、ワクチンによりその予防が可能であるにも関わらず世界で日本のみがワクチン接種の推奨が行われない事(これにより日本の子宮頸癌の発症が世界一とならなければ良いのですが)、この二つの問題にも多方面から取り組んで行きたく思います。

 

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